状況対応型リーダーシップ10
◇部下と取り決めをする
ここまで、リーダーシップスタイルの柔軟性と診断法について学んできました。状況対応型リーダーになるための三番目のスキルは『取り決め』です。これは、このシステム全体を動かすのに極めて重要です。状況対応型リーダーになろうと努力している人に関して心配事のひとつは、彼らが部下に何の説明もせずにこの方法を使ってしまうことです。
例えば私が、ある仕事に関するあなたの発達段階は、『自律した実行者』、つまりあなたは適正能力もあり、やる気も高いと分析したとします。となれば、私はあなたのために、それほど多くの時間を費やす必要はなく、めったにあなたのところに行かないかも知れません。しばらく経って、あなたは私のことをどう考えるでしょうか。そうですね、何か具合の悪いことがある、かまってくれない、無視されている、認められていないと感じるでしょう。
反対に経験が乏しい未熟な部下に対しても同じことが言えます。例えば、こういう部下には多くの指示を与えてやることが必要であり、絶えず傍にいて監督することが必要だと判断したとします。私がそれを続けた場合、この部下はどう考えるようになるでしょうか。たぶん、自分をいびっているんだ、信用してくれていないんだと考えるようになるはずです。
そのようになると、私がどちらの部下にも、なぜそのように行動しているのかを告げなかったために、せっかく診断も良かったしリーダーシップスタイルも適切だったのに、間違って受け取られるのです。熟練した有能な部下だと私が考えたはずのあなたは、自分は何かへまをやったのではないかと思い込むし、未熟な部下は、自分は信用されていないんだろうと思うことでしょう。
私があなたと膝を交えて話し合った上で、あなたは本当のところ私の監督などはほとんど必要としないし、『委任型』リーダーシップスタイルが適切であろうとお互いに納得したとしましょう。そうしておいて、私があなたに会いにいかないとしたら、部下は、はたしてどう考えるでしょう。なぜ話に来ないかを知っていますから、結構なことだと思うでしょう。自分を事細かくは監督しないということは、自分への適正能力とやる気に対するマネージャーからの称賛になると思います。
未熟な部下は、私が会いにいく際にどういう感じを抱くと思いますか。この部下もよい気分になるでしょう。今、指示を与え、こと細かく監督するのは、自分のスキルを伸ばすように考えてのことだからと知っているからです。やがては、この部下を独り立ちさせることができるようになるでしょう。
重要なことは、何が行われているのかを皆が知っているということです。つまり、『状況対応型リーダーシップとは、部下に対して何をするかではない。部下と一緒に何をするかである』ということです。
次回は、状況対応型リーダーシップ11
◇リーダーシップスタイルをどう取り決めるか
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